「結構な金額稼いでるらしいよ」
夜の山手線で文庫本を読みながら吊り革に揺られていると、背後からそんな会話が耳に飛び込んできた。
「あ、俺も聞いたことある。高校の時からやってるって」
ちらりと振り返ると、イマドキの大学生らしい男の子二人連れがいた。
何やらここにはいない友人の噂話をしているらしい。
「でも設備で月に10万くらいかかるんだって」
「何それ、もう仕事じゃん」
もうけ話には目がない───わけではなかったが、私の興味は文庫本の内容から離れ、果たしてその友人がどんな商売をしているのかに向かっていた。
「だからあいつ付き合い悪いんだ」
「でもすげえよな、俺は絶対無理」
なんだろう。IT系?設備ってなんだ。サーバ代に月10万とか?
「売れるらしいからね」
ん、売り物?リアルにあるものを作ってる?Tシャツとかかな。
「部屋とかすごいことになってそう」
「らしいよ。温度管理とか」
部屋?設備で?温度って?
と、いろいろ憶測をしていたら、会話の端々から答えがわかった。
そう、答えは「カブトムシの養殖」。
その発想はなかったわ。